開湯1400年、辰口温泉。
遠く奈良時代に白山を開いた泰澄によって開湯され、多くの人が傷を癒しに訪れたという辰口温泉。室町時代に手取川の洪水によって泉源が埋没し一時途絶えたものの、江戸時代天保七年に当旅館初代の甚四郎が新泉源を発掘し「松崎旅館」を創業。ふたたび辰口温泉の歴史がはじまります。当時の記録によると、宿泊客は宿の手前で服を改めてから来泊するほど格式ある旅館だったとされています。そして時が経った今も、県内外の多くのお客さまから金沢の奥座敷として親しまれ、ご利用いただいております。

泉鏡花とまつさき旅館。
金沢に生まれ、明治時代を代表する小説家として知られる泉鏡花。幼い頃に母を亡くした鏡花は、当時辰口温泉に住んでいた叔母にたいへん可愛がられ、叔母をたびたび訪ねるうちに、辰口温泉で働く美しく艶やかな芸妓さんたちの姿を通して、女性に対する感性を磨いていったとも云われています。そして、鏡花は当館に逗留しながら当時のまつさき旅館を舞台とした『海の鳴る時』を執筆。鏡花の小説家としての出発点となった旅館と言えるかもしれません。
当館では鏡花が愛用した硯箱、直筆の短冊をご覧いただけます。

鏡花 硯箱

泉鏡花ゆかりの雲井の間
(令和4年春に老朽化のため取り壊しをいたしました)