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まつさきだより

温泉ワーケーション体験談 『やってみました、ワーケーション 』 多賀クリニック 多賀千之 先生

2022.3.21

 長引くコロナ禍の外出自粛と会食制限のため、かなりフラストレーションが溜まってきています。加えて、北京2022冬季オリンピックでテレビに釘付けになっていましたから、気がつくと確定申告の3月が間近に迫っています。途端に、焦りが出てきました。これはある程度、固め打ちする必要があります。この悶々とした日常環境の中で仕事の固め打ちをすることは不可能でしょう。それで思いついたのが、最近、メディアでよく聞かれるようになった“ワーケーション”という言葉でした。

 ワーケーションという言葉をウィキペディアで調べてみると、次のように書かれています。

「ワーク」(労働)と「バケーション」(休暇)を組み合わせた造語。英語圏の主要メディアは「workcation」と綴る。観光地やリゾート地でリモートワークを活用し、働きながら休暇をとる過ごし方。在宅勤務やレンタルオフィスでのテレワークとは区別される。働き方改革と新型コロナウイルス感染症の流行に伴う「新しい日常」の奨励の一環として位置づけられる。喧噪や無機質な都市を離れ、通勤ラッシュからも解放され、豊かな自然環境や落ち着いた雰囲気の中で働くことで創造性や生産性が高まる。また、滞在地にとっても地元での消費に伴う経済振興につながるとして期待されている。。

 
01-213号室は2の右から4番目の窓
213号室は2の右から4番目の窓

 そうなんです、仕事を自宅に持ち帰っての在宅勤務では、効率が上がらないし、リフレッシュできないのです。実のところ、そんな一挙両得がありうるのか疑問ではありましたが、まあ流行りの言葉だし試してみることにしました。

 まだまだ、コロナの第6波のピークが過ぎるか過ぎないかの2月中旬ですし、まん延防止等重点措置が継続中の石川県から県外へ出ることは考えられませんので、近場を探すべきでしょう。私は平成12年から平成26年の13年間、芳珠記念病院に小児科医として勤務していましたので、辰口温泉の「まつさき旅館」へ何回も行ったことがあり、ワーケーション先はまつさき旅館と決めました。家内は「ワーケーションというなら、滞在型でないと意味ないし、最低でも連泊しないと。1泊では仕事をする時間も全然ないから」と。
 1週間前にまつさき旅館へ予約の電話を入れました。
 

多賀:「たっぷり仕事を持ち込んで、籠(こも)ってやりたいので、良い部屋じゃなくていいんです。それとチェックイン時間と朝食の時間帯を教えてください。時間を最大限に使いたいですから。」
予約係:「承知しました。2月19日土曜から21日月曜の2泊3日ですね。お部屋、ご用意できます。チェックインが15時で、チェックアウトが10時でございます。朝食は7時半から9時までです。」
多賀:「分かりました。土曜日の午前中は外来診療をして、15時ちょうどに入館できるように動きます。月曜日の朝は、朝食を摂って、30分で辰口から美川へ戻って、9時からの外来診療に間に合わせたいので、7時30分からの朝食でお願いします。」

 
 あまりの慌ただしいスケジュール調整のお願いに、予約係の方も「分かりました、分かりました。」と笑っていました。

 2月19日土曜、幸いなことに、ほぼ時間通りに外来診療が終了しました。朝のうちに着替えなどの宿泊道具も、仕事リストに照らし合わせた準備物も揃えておきました。簡単に昼食を済ませて、多賀クリニックから辰口温泉までの移動時間の約25分を計算して、14時35分に出発しました。少し雪が舞っていましたが、渋滞・遅延するほどではありませんでしたから、15時ちょうどにまつさき旅館の駐車場に到着しました。こんなに早く到着する宿泊客はおらず、一番乗りでした。なんでも、一番って気持ちの良いものです。

 たくさんの書類は中居さんの運んでくれる台車に乗せ、2台のパソコンは故障を避けるために自分で持ちました。まつさき旅館の玄関への渡り廊下を歩いていると、日本庭園に雪が10cmほど綿帽子のように積もり、池の中には鷺(さぎ)が1羽、すっくと佇んでおり、思わず「おーーー!」と唸って見とれていました。「おっと、いけない、いけない、休養にきたんじゃなくて、ワーケーションに来たんだ。」

 型通りチェックインして、本館2階の213号室へ案内されました。案内の途中で中居さんから、「お仕事されるとお聞きしていましたので、昨年、ワーケーション用に改築しましたお部屋をご用意させていただきました」と。
https://www.matsusaki.jp/news/11181/
 213号室に案内されると、十分に広い部屋で、奥には広い立ち机と椅子が準備されていました。さらに、机の上にはスタンドとテーブルタップが置かれていました。
 

中居:「奥様もお仕事をされるようでしたら、同じ大きい机をもう1台お持ちしますが。」
多賀:「そうなんです。別々に仕事をするので、そうして頂けると助かります。」

 
02広い机のワーキングスペース
広い机のワーキングスペース

 窓際の机の近くにパソコン2台を置いて、外を眺めたところ、先ほど歩いた玄関までの渡り廊下と日本庭園、それに丸窓のある茶室が一望できました。2階という場所のため、上空から見下ろすというほどではなく、とても心地よい高さでした。
 

中居:(机の前の壁に掛かっているブラインドを引き上げながら)「こちらが昨年リニューアルしました檜(ひのき)の露天風呂でございます。仕事の合間にご入浴されれば、時間の節約になりますでしょうし、コロナの感染の可能性も全くありませんので、安心してご利用いただけます。」
多賀:「あーー、いいですね。温泉って、感染対策のため脱衣場まではマスクして行っても、入浴中はマスクなしですから、かなり気になるんですよね。」
中居:「このお風呂はもちろん源泉を引き込んでいますので、大浴場まで行かれなくても、温泉の効用も十分に満喫していただけます。」
多賀:「それは有難い。楽しみです。」

 
 中居さんが出してくれたお茶と茶菓子を口に運びながら、早速、パソコンと書類を広げて、仕事を始めました。とにかく、机が広いので助かります。20~30分後の仕事がペースに乗った頃に、家内が大きな荷物を持って到着しました。私と同じように、大きな机、窓からの景色、檜風呂にいちいち歓声をあげて、私に話しかけてきます。
 

中居:「今日のお食事は何時からになさいますか?」
家内:「NHKニュースと北京オリンピックのフィギュアスケートペアフリーを見たいので、7時からにしてください。」
中居:「今夜は別の個室でゆっくりしたお食事をご準備しておりますが、多賀様は連泊ですので、明日の昼食と夕食はいかがいたしましょうか? お仕事をたくさんなさりたいとおっしゃってましたので、お昼用に簡単に食べられるお弁当、少し立派なお弁当をご準備することもできます。お夕食も従来通りの順番にお料理をお出しするフルコースの和食以外に、お料理を一斉にお出しするコースも、簡単なセミフルコースの和食もお出しすることができますが?」
家内:「時間を節約したいので、夕食は和食フルコースを一気出しにしてください。ただ、いつも朝食も夕食もすごいボリュームなので、明日の昼食は要りません。仕事ばっかりで動きませんので、あまりお腹が空かないでしょうし、お腹が空いていないと夕食が美味しく感じないと思いますから。」

 
 お部屋に感激して一々同意を求める家内に応じていると仕事が進まないので、ひとまず露天風呂を試すことにしました。部屋から扉を1枚開ければ脱衣場で、次の扉を開ければ檜の露天風呂。仕事を中断して、1分もしないうちに湯船に浸かって、外の日本庭園を眺望できます。極楽、極楽。まだリニューアルして間もないので、本当に檜の香がしていました、爽快、爽快。家内が「風呂、どうや?」とブラインド開けて部屋から覗いてきたのが、不快、不快。
短時間で風呂からあがって、また仕事に復帰します。

03 自室の檜の露天風呂
自室の檜の露天風呂

 これがまた心地よいリフレッシュになって、さあやるぞという気になりました。家内も夕食前までの3時間で、「いやー、仕事、捗(はかど)る、捗る。かなりの仕事を積み込んできたけど、この調子で行くと今夜中に仕事がなくなってしまうわ。明日は仕事を取りに帰らんとあかんかも。」

 夕食は冬の海の味覚、ズワイガニ、のどぐろ、真薯(しんじょ)に和牛ステーキ。のどぐろは脂が乗っている上に、火の入れ方がミディアムレア状で柔らかくて、これまでに食べた中でダントツ最高に美味しいのどぐろでした。のんびり、ゆっくり、たっぷり、味わいながら楽しみました。これこそワーケーションの中のバケーション部分です。まつさき旅館は本館と新館それぞれに板前さんを配して腕を競っていますから、料理がいつも美味しくて、毎回、違ったものを出していただけるのが嬉しいです。コロナ禍とあって、中居さんも必要最低限の出入りにして頂いていて、本当に安心して食事をすることができました。ヒヤヒヤ・ビクビクしならが食べるのでは、味気なくなる、味を感じなくなりますからね。

 土曜日は夫婦ともに、24時まで仕事をして、土曜日の半日で私は3回、家内は2回、部屋の露天風呂に入浴しました。仕事が捗った満足感と入浴後の脱力感が合い間って、フカフカの布団で熟眠できました。

 日曜日7時半、起床。まずは朝風呂。連泊ですから、荷造りの必要がありません。また、スタッフの出入りを少なくするために、シーツやタオルの交換、洗面所グッズの補充もなしにしてもらいました。食べきれないくらいの量と食べ残したくない質の朝食を摂って、また机に向かいます。仕事が一区切りしたり、少し疲れてペースが落ちてきたら、ひとっ風呂。と言っても、10分ぐらいの小休憩ですが、すごいリセット感、リフレッシュ感です。

04こんな豪華でも朝食
こんな豪華でも朝食
 

多賀:「露天風呂はやっぱり、外の景色が見える昼間が最高だよねー。特に今日なんか、日本庭園にちらほら雪が舞い降りていて、これぞ日本という感じ。」
家内:「そんなことより、私、持ってきた仕事がなくなっちゃったから、午前中のうちに一度クリニックに仕事を取りに帰ってくるわ。」

 
 実は、午前10時から12時に私は大きなイベントを抱えていました。金沢市のふじさわ眼科・小児科クリニックの藤澤裕子先生と一緒に、子育て関連の『オーダーメイド・ペアレンティング勉強会』を企画していたのです。主催は藤澤先生でしたが、zoomオンラインの段取りを私が請け負っていました。当初はネット環境が安定している多賀クリニックへ戻って携わろうと考えましたが、土曜日、まつさき旅館に到着してすぐに、無料Wifiの接続具合を確認したところ、十分に安定していましたので、ここで自分のパソコンを使って関わることにしました。参加者は25名で、富山県や福井県からの参加もありました。演者のプレゼンと参加者の質疑応答を滞りなく行うことができました。私が温泉旅館でハンドリングしていることなど、他の方々は全く気付いていないと思います。コロナ禍のお陰で、オンラインという便利なツールが手に入ったことは、移動時間も駐車料金・会場費もいらなくなって有り難いことです。

 午後1時、青空が少し見えて、日の光が差してきました。家内の「せっかくだし、ちょっと庭の散歩に行きましょうよ。一番暖かい時間帯だし、かなり疲れてきたから。」の言葉にほだされて、ダウンジャケットを羽織って外出しました。日差しがあり、風も少なかったので、快適でした。思わず、「日本人で良かったなあ、温泉の近い北陸で良かったなあ、ワーケーションっていいなあ。」

 あまりに快適だったので、辰口温泉を掘り当てた灰屋源助さんの記念碑、なんだか幸せになれそうな名前の集福寺、ボケ封じの白寿観音、辰口温泉総湯と足湯を1時間ほどかけて散策しました。もちろん、源泉の露天風呂にすでに数回入っていますので、足湯には浸かりませんでしたが。真冬のまん延防止等重点措置期間中であり、この外出中には他の人にほとんど出会いませんでした。

 ロビーに戻ると、喫茶コーナーの方が、「コーヒーをおいれしましょうか?」と。そうだそうだ、部屋に1人1回分のお飲み物サービス券が置いてありました。コーヒー党の私たちは朝食後のコーヒーを今朝は飲んでいなかったので、即座に「お願いします。」広々としたロビーで、綿帽子をかぶった日本庭園を愛(め)でながら、暖かいコーヒーを啜(すす)ります。思わず、ソファーに深くもたれて、目を細めました。バケーションだあ。
 

家内:「見て、見て、白鷺が池の中で魚狙っているよ、真っ白で綺麗やねえ、写メ撮らんと。」
多賀:「う~~ん、あれって白鷺じゃないと思うんだけど?」

 
05日本庭園にたたずむダイサギ
日本庭園にたたずむダイサギ

 部屋に戻ってからネットで調べたところ、やはり「シラサギ(白鷺)」という鳥は存在せず、白っぽい鷺の総称でした。JR北陸線にはしらさぎ号が走っていますので、ついついシラサギと言ってしまいます。私たちが見ていた黄色い嘴の真っ白な鷺は「ダイサギ(大鷺)」と分かりました。
 

喫茶スタッフ:「お仕事が捗るように、お部屋にコーヒーをお持ちになりますか、ドリップしたコーヒーをポットにお入れしますので。」
多賀:「有難い、有難い、やはりデスクワークにはコーヒーですよね。」

 
 夕食は和食フルコースを一気出ししていただいてスピーディーに。甘エビ、ふぐ鍋、霜降り牛のシャブシャブ。前夜とは違ったメニューで、満足、満足。
 昨夜同様、入浴休憩しながら24時まで仕事をして、24時からパソコンや書類をきっちり片付けました。

 月曜日、6時半に起床し、即、朝風呂。7時半から朝食。8時にまつさき旅館を出発。
 ところが、ここでちょっとトラブル。夜半からの雪が車の上に15cmぐらい積り、加えて昨日昼が暖かかったので、フロントガラスの上は凍っていました。車の上の雪を私がスノーブラシで落としている間に、フロントの方が入り口の足湯からお湯を汲んできて、フロントガラスにかけてくれましたので、5分ぐらいで出発できました。道路も一部がアイスバーンになっていて、25分ぐらいのところを40分ほどかかりました。8時50分に多賀クリニックに到着して、9時からの外来診療には滑り込みセーフでした。仕事漬けの2泊2日でしたが、リフレッシュしながらでしたから、疲れをひきずっておらず、順調に外来診療をこなすことができました。

 コロナ禍のワーケーションでしたから、旅館のスタッフや他の宿泊客との接触がもっとも気がかりでした。しかし、2泊2日を終えてみれば、フロントの方とマスク装着パーテーション越しでの2~3分間の記帳、マスク装着の中居さんの部屋案内と食事接待、それもトータルで10分ぐらい。大浴場は一度も使わず、このコロナ第6波の真っ只中ということで宿泊客は遠目に見ただけでした。車での往復だったので、サービスエリアや他のお店には立ち寄る必要がありません。

 結局、私は月曜日の朝風呂含めて7回、家内は6回、檜の露天風呂に浸かりました。まつさき旅館は金沢の3文豪の1人の泉鏡花が逗留して、小説「海の鳴る時」を書いたことで有名です。私たちは確定申告や助成金などの書類作成という下世話な仕事をしながらの逗留でしたが、文豪の温泉場逗留執筆の一端を味わえたような気がしました。

(石川医報への寄稿文から転用 第1749号 令和4年(2022年)3月16日)
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